血糖値が乱れると甲状腺ホルモンも乱れる?
― 新年のリセットに考えたい、代謝と血糖値の負のスパイラル ―
あけましておめでとうございます。管理栄養士のAcco MUKAWAです。
年末年始に少し食べ過ぎてしまい、「体をリセットしたい」「今年こそ健康的に体重を整えたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
近年、体調管理や減量のキーワードとして「血糖値管理」が注目されていますが、実はこの血糖値と深く関係しているのが「甲状腺ホルモン」です。
血糖値と甲状腺ホルモンは、それぞれ独立した存在ではなく、互いに影響を与え合い、時に“負のスパイラル”に陥る関係にあります。
血糖値の乱れが、甲状腺ホルモンの働きを乱す
血糖値が急上昇・急降下を繰り返す状態や、インスリン抵抗性※が高まった状態は、体にとって大きなストレスです。
こうした状態が続くと、エネルギー代謝を担うホルモンの働きにも影響が及びます。
甲状腺ホルモンは、体内の代謝を支えるホルモンであり、糖や脂質を効率よく使うための土台となっています。
血糖値が乱れた状態では、この甲状腺ホルモンの働きが十分に発揮されにくくなり、TSH(甲状腺ホルモンの生成を促す刺激ホルモン)やT3(実際に体の中で働く「活性型」の甲状腺ホルモン)のバランスが崩れやすくなることが知られています。
血糖値の問題は、糖尿病予備軍や糖尿病、甲状腺疾患といった特定の病気に限った話ではありません。実は、すべての人にとって健やかな毎日を送るための体調管理の要(かなめ)なのです。
※血糖値を下げるホルモンであるインスリンが上手く働かない状態のこと
甲状腺ホルモンの乱れが、今度は血糖値を乱す
一方で、甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、血糖値のコントロールにも影響が出ます。
甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンが不足している場合、筋肉への糖の取り込みが低下し、インスリン抵抗性が高まりやすくなります。その結果、血糖値が安定しにくくなることがあります。
逆に、甲状腺機能が亢進し、甲状腺ホルモンが過剰な状態では、腸からの糖の吸収が早まったり、体内での糖の産生が過剰になったりして、血糖値が乱れやすくなることもあります。
このように、血糖値の乱れが甲状腺ホルモンを乱し、甲状腺ホルモンの乱れが血糖値を乱すという、負のスパイラルが生じやすいのです。
甲状腺ホルモンは、血糖値を下げる「魔法」ではない
代謝が活発になると聞くと、「甲状腺ホルモンが整えば血糖値も自然に下がる」と思われがちですが、そう単純ではありません。
甲状腺ホルモンは、必ずしも血糖値を直接下げるホルモンとして作用するわけではなく、血糖調整がうまくいくための、あくまで“土台”を支える存在です。
どれだけ甲状腺ホルモンの働きが良くても、食事内容が乱れていれば、血糖値は安定しません。
だからこそ、ホルモンだけに期待するのではなく、日々の食生活を整えることが重要になります。
まず整えたいのは食事バランス― 低GIと良質な脂質で代謝を安定させる ―
血糖値を安定させるためには、栄養バランスの良い食事を基本としつつ、糖質と脂質の働きに注目しましょう。極端な制限ではなく「糖質の吸収速度」と「エネルギーへの変換効率」をコントロールすることが、その鍵を握っています。
全粒穀類と「個体差」の考え方
食物繊維を豊富に含む全粒穀類は、一般的に糖の吸収が穏やかな「低GI食品」の代表です。ただし、血糖値の反応には個人差があり、代謝の状態や腸内環境によっては、低GI食品でも変動しやすいケースがあります。
大切なのは数値だけに頼らず、自分に合った「質の良い炭水化物」を適量取り入れ、インスリンの過剰分泌を抑えて甲状腺ホルモンが働きやすい環境を作ることです。
脂質は甲状腺ホルモンと代謝のブースター
同時に、脂質を敵視しすぎないことも重要です。最新の研究では、良質な脂質がTSHやT3といった甲状腺ホルモンのバランスを支え、代謝のスイッチを入れる役割を担うことが明らかになってきています。
適度な油脂は、血糖値を物理的に安定させるだけでなく、甲状腺機能を介して全身のエネルギー代謝を底上げします。青魚のオメガ3やオリーブオイルを賢く取り入れ、制限ではなく「代謝を回す・整える」という視点を大切にしましょう。
食事に加えて、適度な運動と休養を
血糖値と甲状腺ホルモンのバランスを整えるためには、食事だけでなく、運動や休養も重要な要素です。
甲状腺ホルモンは、ストレスや睡眠不足の影響も受けやすく、こうした要因が重なると、ホルモンバランスが乱れやすくなることが知られています。
適度に筋肉を使うことで、糖の利用効率が高まり、インスリン感受性の改善につながります。一方で、過度な運動や疲労の蓄積は、かえって体にストレスを与えてしまうこともあります。
無理のない運動を続けながら、意識的にリラックスする時間を取り、質の良い睡眠を確保すること。
この食事・運動・休養のサイクルが整ってこそ、血糖値と甲状腺ホルモンが安定し、本当の意味で健康的な体づくりが進んでいきます。
まとめ
今年の健康管理は、「減らす」ことよりも「整える」ことから。
血糖値と甲状腺ホルモン、両方の視点を意識しながら、今年の健康づくりをスタートしてみてはいかがでしょうか。
本年も、皆さまの健康を心より応援しております。どうぞよろしくお願いいたします。
参考文献
厚生労働省,「運動療法」, e-ヘルスネット.
厚生労働省,「ストレスマネジメント」, e-ヘルスネット.
厚生労働省,「睡眠不足」, e-ヘルスネット.
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
Eom YS, Wilson JR, Bernet VJ. Links between Thyroid Disorders and Glucose Homeostasis. Diabetes Metab J. 2022 Mar;46(2):239-256. doi: 10.4093/dmj.2022.0013. Epub 2022 Mar 24.
Mullur R, Liu YY, Brent GA. Thyroid hormone regulation of metabolism. Physiol Rev. 2014 Apr;94(2):355-82. doi: 10.1152/physrev.00030.2013.
