甲状腺ノート

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「コレステロールが高いのは体質のせい?」甲状腺と脂質異常症の意外な関係

こんにちは、管理栄養士のAcco MUKAWAです。

「健康診断でコレステロールや中性脂肪を注意されてしまった……。揚げ物を控えて運動もしているのに、どうして?」そんな風に悩んでいる方は少なくありません。

実はその数値の異常、食生活や運動不足ではなく、喉にある小さな臓器「甲状腺」の不調が原因かもしれません。今回は、知っているようで知らない「甲状腺ホルモン」と「脂質」の深い関係について、分かりやすくお話しします。

1.    甲状腺ホルモンは、体の「元気の源」

甲状腺ホルモンは、全身の細胞に「エネルギーを使って代謝して!」と命令を出す、いわば「代謝の司令塔」です。

私たちが食べたものの脂質をエネルギーに変えたり、古くなったコレステロールを回収して処分したりするのも、すべてこのホルモンの指示で行われています。特に肝臓では、血液中の「LDLコレステロール」をキャッチして掃除する機能があるのですが、これを元気に動かすためにも甲状腺ホルモンが欠かせません。

2.    ホルモンが足りないと、血液中が「大渋滞」に!

ところが、何らかの理由でこのホルモンが少なくなってしまうと(甲状腺機能低下症)、体の代謝スイッチが「弱」の状態になってしまいます。

すると、せっかくの「血液の掃除機能」がダウン。回収されなかったコレステロールが血液中に溜まり、数値が上がってしまいます。さらに、中性脂肪を燃やす力も弱まってしまうため、分解されなかった脂肪が血液中に残り、数値が上がってしまうのです。

「食事に気をつけても数値が下がらない」「以前と同じ生活なのにLDLコレステロールや中性脂肪が増えた」という方は、努力不足ではなく、「体が脂質を処理できない状態」になっているのかもしれません。

特に40代・50代以降は、甲状腺機能のわずかな低下がコレステロール値の上昇につながりやすいという研究報告もあり、注意が必要な世代です。

3.    「潜在性」の段階からリスクは始まっている

ここでちょっと注意したいのが、血液検査でホルモン量は正常範囲内にあるものの、脳が一生懸命「ホルモンを出せ!」とムチを打っている「潜在性甲状腺機能低下症」という状態です。

「病気の一歩手前だから大丈夫」と思われがちですが、実はこの段階から動脈硬化をはじめ、心血管疾患リスクを上昇させる恐れがあります。自覚症状がなくても、わずかなホルモン不足が長期間続くことで、血管に少しずつダメージが蓄積されていくのです。

4.    根本的な原因を解決しよう

もし甲状腺の不調が原因で脂質の値が高くなっているなら、まずは甲状腺の治療をすることが、数値を下げる一番の近道です。足りないホルモンをお薬で補ってあげると、スムーズに代謝が戻り、LDLコレステロールや中性脂肪の数値も自然に落ち着いてくることが多いのです。

もちろん、脂質異常には食生活が影響している場合もありますので、青魚やたっぷりの野菜を習慣的に取り入れた栄養バランスの良い食事もおすすめです。

まとめ

更年期や加齢による体の変化を感じ始める40代・50代こそ、これからの健康のために「甲状腺」という視点が大切です。

「脂質異常症」は、ただ数値が高いだけの問題ではありません。「なぜ高いのか?」という背景には、体の司令塔である甲状腺ホルモンが関わっているかもしれません。特に女性や、今まで通りの食生活なのにLDLコレステロールや中性脂肪の数値が悪くなったという方は、一度「内分泌内科」などで甲状腺ホルモンの検査(血液検査で分かります)を受けてみることをおすすめします。

自分の体の「今の状態」を正しく知って、無理のない健康づくりを始めていきましょう。

参考文献

Baretella O, et al. “Associations Between Subclinical Thyroid Dysfunction and Cardiovascular Risk Factors According to Age and Sex.” J Clin Endocrinol Metab. 2025;110(5):e1315-e1322.

Canaris GJ, et al. “The Colorado Thyroid Disease Prevalence Study.” Arch Intern Med. 2000;160(4):526-534.

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