元気すぎるシニア猫が 実は「甲状腺機能亢進症」だった話
編集/ライターの蓮見則子です。
友人が飼っている保護猫ちゃん。推定12〜13歳の立派なシニア猫なのに最近やけに元気で活発に動くように。
食欲もりもり、毛並みツヤツヤ……。「年齢を感じさせない若々しさだね〜!」なんて話していたら、つい先日、動物病院で「甲状腺機能亢進症」と診断されたのだそうです。
ということで、本日はペットの甲状腺トラブルの話です。
猫と犬、真逆の甲状腺トラブル!?
甲状腺ホルモンが多すぎる状態をまとめて「甲状腺中毒症」と呼びます。その中でも、甲状腺そのものがホルモンをつくりすぎている場合が「甲状腺機能亢進症」。代表的なのは人間のバセドウ病です。
一方、ホルモンが足りない状態は「甲状腺機能低下症」といい、代謝がスローになって動きが減ったり太りやすくなったりします。
そして。
猫ちゃんに多いのは、代謝が常にアクセル全開の「亢進症」。
ワンちゃんに多いのは、代謝がスローペースになる「低下症」。
名前だけ聞くと難しそうですが、要するに「代謝が良くて動きすぎるか、代謝が悪くて元気が出ないか」ということ。なんだか、猫の“きびきび”と犬の“まったり”が、そのまま病気の特徴に現れているみたいですね。
「健康そう」に見えることが落とし穴
「最近よく動くし、ごはんもペロリ。しかもスリムで毛並みもピカピカ!」——そんな姿は、どう見ても健康そのもの。甲状腺機能亢進症の症状だとは気がつかないのは当たり前です。
飼い主さんはむしろ「老化防止の成功例」くらいに思っちゃうかも。友人も「どこか悪いなんて分からなかった」と驚いていました。人間でもバセドウ病で代謝アップしてる時期は「やせて元気そう」に見えるのと似ています。
でも、体の中では常にアクセル全開。心臓や腎臓に負担がかかることもあります。
猫の甲状腺機能亢進症は、全体で見れば発症率は数%程度でしかも高齢期(10歳以上)がほとんど。
若い頃の健康診断メニューにはまず入っていない。高齢になっても「血液検査は腎臓・肝臓・血糖まで」みたいなセットが普通で、甲状腺ホルモン(T4)の検査はオプション扱いが多いようです。
シニア期に入ったら、定期検診で甲状腺ホルモンの検査も入れてあげると安心ですね。

人も動物も代謝の司令塔は甲状腺
高齢猫に多いこの「甲状腺機能亢進症」は、放っておくと寿命を縮めてしまうこともあります。
適切な治療を行うことで延命効果が得られる病気なので、検診はもちろん何かのきっかけで動物病院にかかった際には、甲状腺のことも相談してみるとよさそうです。
私の友人は、猫ちゃんに外科手術はかわいそうなので、まずは投薬(チアマゾール)で甲状腺機能を正常にする治療を選んだと言ってました。
人でも動物でも、甲状腺ホルモンは代謝をコントロールする「司令塔」のような存在。足りなすぎても、多すぎても、体調や気分が大きく揺らぎます。
もし自分や身近な人、そしてペットの「いつもと違う元気さ」や「なんとなくの不調」が気になったら、甲状腺のことを思い出してみて。
【犬に多い甲状腺機能低下症、猫に多い甲状腺機能亢進症】
このお話は「元気の源・甲状腺を考える会」の本『女性ホルモンよりパワフル! 甲状腺ホルモンの底力』の中でも紹介しています。
気になったら、ぜひ本も手に取ってみてくださいね♪
